敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

翌朝、私はいつもより少し早く目を覚ました。

カーテンの隙間からこぼれる朝日が、やけに眩しく感じる。普段なら心地よいはずの光なのに、今は刺々しく突き刺さるようだった。

寝ぼけた頭のまま、ベッドサイドのスマホに手を伸ばし、メッセージアプリを開く。そこには未読の通知がひとつだけ輝いていた。

差出人は――「片桐」

一瞬、息をのむ。昨日交換した名刺に連絡先が書いてあることを思い出し、ぼんやりしていた頭が鮮明に冷えていくのを感じた。

メッセージを開くと、そこにはたった一行の文章が並んでいた。

「君みたいな秘書がどうして藤堂のもとにいるのか、不思議で仕方ない。よければ話さないか?」

短い言葉。それだけなのに挑発的な響きが、胸の奥をざわつかせた。

私は小さく息を吐きながら、画面を見つめる。
昨夜、柊真さんが見せた冷たい態度が脳裏によみがえった。

――信じていた人間に裏切られたこと。
――それ以来、人を信じるのが怖くなったこと。

柊真さんが一人で抱えているものの大きさを思い知り、私はどうしようもなく胸が痛くなる。