敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

その夜、柊真さんは自室の窓際に佇み、何かを考えているようだった。
普段の姿とは違い、どこか儚げな影が宿っている。

私は、少しだけ開いた扉の入口で立ち止まる。
明らかにどこかいつもと違う彼に、どう声をかければいいのか分からなかった。

心配だった。でも、彼の中に踏み込んではいけない領域がある気がして、不安で足がすくむ。

「……盗み見でもしてるのか?」

不意に低く冷静な声が響き、私は驚いて肩をすくめた。柊真さんが振り向き、鋭い瞳が私を捉える。

「いえ、その……大丈夫かなって」

ぎこちなく言葉を選びながら答えると、彼は微かに口元を緩めた。でも、それは疲れた作り物の笑みにしか見えなかった。

「茉莉」

静かに名前を呼ばれる。その声には、抑えきれない何かが滲んでいた。

「こっちおいで」

ソファを指差され、私は少し緊張しながら隣に腰を下ろした。

柊真さんはグラスをテーブルに置く。その表情にはどこか迷いが浮かんでいた。