敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

そして今、説明を終えた自分は、会議室の重い沈黙に耐えながらスクリーンの横に立ち尽くしている。

「……ご苦労さま」

静まり返った中、コンペを開催した部長が発した言葉がやけに冷たく聞こえる。返事をしようと口を開けるが、喉が渇いて声にならない。

ここまで頑張ったのに――。

その思いが胸をよぎるたび、喉の奥が詰まり、息苦しさがさらに募る。視界の端には、上司の厳しい視線が刺さっていた。

「木崎さん、これは、弱いんじゃない?この案で本当に通ると思ったの?どうやって考えた?」

沈黙を破る低い声が、会議室全体に冷たく響いた。

「これは、顧客のデータを基にしていて……」

精一杯声を振り絞ったつもりだったが、それはまるで言い訳のような言葉だった。

自信のなさが溢れた言葉に、上司は、わざとらしいくらいの大きなため息をつき、途中で遮った。

「でもさ、これじゃ数字が動く根拠にはならないだろ?そんなの少し考えれば分かるはずだ。社内だからって適当に考えたようにしか思えない」

会議室の壁がじわじわと迫ってくるようだった。浅くなる息を必死に抑え、私は静かに頭を下げる。

「……部長。時間も押しているので、そのくらいで」
「まぁ、いいよ。一旦この案は持ち帰って」

別案の発表者として参加していた坂本先輩の小声で部長は話を切り上げた。

「貴重なお時間を無駄にしてしまい申し訳ありませんでした」

それだけがようやく絞り出せた言葉だった。