敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

仕事を終え、ソファに深く腰掛けた柊真さんが、ぽんぽんと自分の足の間を叩く。

「茉莉、こっち、おいで」
「え……?」
「別に噛みついたりしないよ」

そう言って、いたずらっぽく笑う。
冗談めいてはいるけれど、どこか甘い響きを含んだ声に、心臓が跳ねる。

ためらいながらも、そっと近づくと、彼は何の抵抗も許さないように、私の腕を引いた。

気づけばすっぽりと、彼の体に包まれる。

仕事終わりの柊真さんはとても甘い。その優しさは私をとても幸せにしてくれるのだけれど。

「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」

優しい雰囲気の柊真さんなら何か答えてくれるかもしれない。
そう思った私は、くるっと顔の向きを変えて柊真さんに向き合った。

「私がお仕事を手伝うの、そんなにダメですか?」

胸の鼓動を誤魔化すように、思い切って聞いてみる。

「んー……」

柊真さんは、少し考えるふりをしたあと、さらりと私の髪を撫でた。

「茉莉には、そういうことより、もっと別のことを頼みたい」

耳元で囁かれる声に、思わず肩が跳ねる。

「えっ……?」
「たとえば、俺がこうやって疲れてたとき、“お疲れさま”って言いながら抱きしめてくれるとか?」
「……っ」

心臓が一気に跳ね上がり、頭が真っ白になる。

「そ、そんな……」
「ダメ?」
「……っ」

顔が熱くなるのを感じながら、思わず視線をそらす。
すると、柊真さんは楽しそうに小さく笑った。

「ほら、こういうのも大事でしょ?」
「そ、そういう話じゃなくて……!」

反論しようとするけれど、彼の腕が私の肩をすっと抱き寄せ、気づけばさらに近づけられていた。
優しく撫でられる髪、肌をかすめる吐息——。

「……そんなに頑張らなくても、茉莉がいてくれるだけで十分助かってるんだよ」

囁く声が近くて、もう、逃げられない。

「ねえ、茉莉」
「な、なんですか……?」
「キスしてほしいな」
「……っ」
「そしたら、少しは手伝わせてあげるかも」

そう言って、彼は微笑む。
完全に甘い雰囲気に持ち込まれてしまっている。

誤魔化しになんて乗らないで彼の奥にある、本当の気持ちを知りたいのに。

柊真さんの甘い空気は本当に自然に私を溶かしてしまうのだった。