敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

「とは言っても、不安にはさせたくないから。契約はしっかりしよう」

そう言って、柊真さんはタブレットを手に取り、私に画面を見せる。

そこには、彼が手掛けるプロジェクトの詳細が並んでいた。どれも魅力的で、思わず引き込まれるような内容ばかり。

「すごい……」

無意識に声が漏れる。けれど、次の瞬間——提示された待遇を見て、思わず息を呑んだ。

「これって……私にこんな条件が出せるなんて、いったいどんなお仕事を……？」

驚きと戸惑いを隠せずにいると、柊真さんが真剣な目でこちらを見つめた。

「フリーランスの仕事はどうしても多岐に渡るから、大変だと思う。それに見ての通り、俺は家事や整頓は全く無力だから。身の回りのことも手伝ってもらいたいと思っているんだ。足りないくらいだろう」

さらりとそう言う彼に、思わず笑いそうになる。

「でも、それをやってくれるだろうと信じられるから、茉莉にはそれだけの価値があるんだよ」

——価値がある。

たったそれだけの言葉なのに、胸がいっぱいになった。

これまで、どんなに頑張っても認められない環境にいた私にとって、その一言がどれほどの意味を持つのか彼は分かって言っているのだろうか。

「……ガッカリされないように、頑張ります」
「大丈夫だって。問題なければ署名しておいて。随時気になった点は二人で更新していこう」

柊真さんの言葉に、新しい未来への扉が開かれるのを感じる。
私は、彼とともに歩き出すことを決めた——。