敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

前職の全てが終わり、落ち着いた頃——。

「茉莉、今ちょっといい?」

柊真さんの声が、静かなリビングに響いた。
私はソファでくつろいでいたけれど、その言葉を聞いた瞬間、慌てて姿勢を正す。

そして、急いでダイニングテーブルへと向かった。

「無事に辞められたわけだから、これからの話をしよう。この間の提案の内容、覚えてる?」

仕事モードとは少し違うけれど、頼りがいのある優しい声に、私は小さく頷いた。

「……はい。柊真さんのお手伝いという形で、一緒に働かせていただけるってお話ですよね」

付き合い始めた頃、柊真さんは私にそんな提案をした。

今の会社では、木崎の実力が活かしきれていない。俺と一緒に働いてほしい。木崎に助けてほしいことが山ほどあるんだ。

今思い返しても、あの日柊真さんがくれた言葉は、私には勿体なさすぎる言葉だった。

「でも、本当にいいんですか? 私、転職活動も頑張りますし……」

遠慮がちに言う私に、柊真さんは呆れたように笑う。

「俺が君を選んだんだ。茉莉の働きを数ヶ月だけど見てきた。これでも見る目はあると思ってる」

その一言が、心にまっすぐ突き刺さる。誰かがここまで自分を信じてくれている——その事実が、胸の奥に温かいものを灯した。

「……わかりました。ご迷惑をかけないように頑張ります。ご指導、よろしくお願いいたします」

意を決してそう答えると、柊真さんは満足そうに微笑んだ。

「堅いな。フリーランスなんだし自由はきくから、なんでも相談して」

その笑顔を見た瞬間、不安がすっと軽くなるのを感じた。