自分が好きな作品を思い浮かべると、自ずとペンは動く。
例えば雰囲気。
静かな自然の描写も入れて、心情とリンクさせたり。
場所にもこだわりたい。
自分も物語の中にいるような、そんな構図が好き。
それから登場人物。
完璧な人よりも欠点があった方が感情移入できる。
でも映画って現実を忘れて楽しむ空間だし、非日常感も少しだけ欲しい…
「ハハッ」
柊くんの笑い声で、ハッと我に帰る。
隣を向くと柊くんは既にペンを置いていて、くくっとまた笑った。
「あ…ごめん。もう少し、書くから」
待たせているかと思ってそう言うと、彼は首を横に振ってみせた。
「全然いいよ。
いいんだけど………全部声に出てるから」
え、うそ。声に出てた?
自分でも気づいていなくて、私は熱くなった頬を黙って横髪で隠した。
なんか柊くんって、意外とフランク。
そう思いながらチラリと隣を盗み見ると、彼は堪えるようにまだ笑っていた。

![忘れられない映画[1話]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1776983-thumb.jpg?t=20260310195325)

