高嶺のぼっちはかまわれたい

「忘れ物ですか?」

「違ぇよ。ほら、行くぞ」


ジミー先輩は、校門の外からぽかんと校舎を見上げていたわたしの手を引いた。


夜の校舎はしんと静まり返っていて、なるべく足音を立てないように歩いていても、やけにその音が響くような気がする。


「ジ…ジミー先輩、見つかったらどうするんですか」

「見つかったら、忘れ物を取りにきたって言えばいいじゃん」


窓から入る月明かりが、ニッと微笑むジミー先輩の顔を照らす。


そのとき、わたしたちとは違う足音が聞こえてきた。

そっと廊下の角から顔を覗かせると、懐中電灯を握って校舎を巡回する警備の人だった。


忘れ物を取りにきたと言い張ったとはいえ、見つかったら絶対に怒られる。


「帰りましょうよ、ジミー先輩…!」

「なんで?だってめちゃくちゃスリルあるじゃん」


不安丸出しのわたしとは違って、なぜかジミー先輩は楽しそうだ。


ジミー先輩に連れられて物陰に隠れて息を潜めていると、警備の人はわたしたちに気づくことなく通り過ぎていった。