「俺、さ、ほんとのこと言うと、百奈のこと、苦手っていうか。むしろ、嫌いだったんだよね。」
「………は??」
淡い街灯が等間隔に並ぶ道で、せっかくいいムードなのに。
ちょっと!私だってねえ!鹿助君のこと嫌いでしたけど?!
「でもさ、それって全部ただの偏見と妬みで。優秀な百奈に負けたくない自分がいて、本当の百奈を知ろうとしなかった自分が駄目なだけだった。」
あまりに斜め上の理由で、私の顔が驚きを隠せない。
「………優秀な、私?」
「百奈、論文で賞獲ってたじゃん?あれ、俺は獲れなかったからさ。ずっと百奈のこと、妬んでた。」
「…………」
まさか、鹿助君がそんな理由で私を嫌いだったなんて。全然知らなかった。。
「でもさ、本当の百奈は友達思いで。意地っ張りで強情で、よく食べるし、」
「貶してるよね?!」
「百奈と話して、本当の百奈を知るうちに、いつの間にか百奈のことばっか考えてる自分がいてさ。」
後ろから抱きしめる腕が、力強いのに震えている。いつものカッコいい鹿助君とはいえない。
「俺……ね、本気で百奈のこと、好きになっちゃった。」
ねえ鹿助君、その言葉、信じていいの?
「だったら……なんで、さっき帰るなんて言ったの?」
「言わなきゃダメ?」
「……うん。私のこと好きなら、教えて。」
「なら言うけど」
鹿助君の腕が緩んで、私の耳元で鹿助君が囁いた。
「百奈のことストーカーしてるリーマンを、ちょっとやっつけてきた。」
「………ウソ」
「ホント。」
振り返れば、そこには鹿助君の綺麗な顔と、人肌を感じる温もりと、それから、きゅっと結ばれた唇があった。
あまりの顔面の近さに緊張する私。言葉に詰まったのに、鹿助君がキスをしてきた。
嬉しくて鳥肌が立つ。
「私もね、好きだよ、鹿助君。」
きっとね、初めて公開キスされた時から。私は鹿助君に囚われちゃってたんだ―――
「リーマンて……どうやってやっつけてきたの?」
「こうグッと脇をしめて、パアンとみぞおちに一発入れてな?」
「…鹿助君、ここ、頬のとこ、赤くなってる。まさかリーマンに一発もらっちゃったの?」
「男の勲章を掘り返すつもり?」
「そんなの、ぜんぜん鹿助君のキャラじゃないよ。」
とりあえずケガした頬にキスを落として、痛いの痛いの飛んでけ〜って言いながらドラッグストアでバンソウコウを買った。



