「やめてよ!勝手に一人にしとして何助けに来てんの?!さっさと帰ればいいじゃん!!」
「百奈、聞いて」
「聞くか馬鹿!!」
いつもの可愛いだけの私はどこにもいない。意識なんてできない可愛さは、電車の走行音と共にどこかにいってしまったのだ。
「帰るし!」
鞄を肩にかけ直して、駅の方へと歩いていく。
駄目だ。これ以上鹿助君といると、どんどん可愛くない私になりそう。
「百奈―――ごめん!」
後ろから捕獲されるように、抱きしめられる。
「なっ、……に、やって……」
やめてよって突き放したいのに。
その衝動とは裏腹に、私の目にはなぜか涙が溜まり始める。
認めたくない認めたくない!
今こうして、後ろから抱きしめられてることを、ずっと待ち望んでいたなんて―――
鹿助君の吐息が、私の頬にかかる。すっと息を吸ったのが分かって、私の心臓がピンと張った。



