「わたしもね、安心したよ。鹿助君が私の身体目当てなんじゃないって分かって。」
身体目当てじゃないけど、俺に堕ちたら速攻縁切るつもりではあるけどね。
自分でそう思っておきながら、どうしてか居心地の悪さを感じてしまう。気を紛らわせようと、もうほとんど残されていない水を飲み干した。
「ねえ、この後どうする?」
「ごめん。俺、用事思い出してさ。今日は帰るね。」
「……そっ、か。」
百奈が不意に俯いて、笑顔が消える。
出たね、男を引き留めたい演技。
鼻で失笑したい気持ちを抑えて、百奈の頬をむにっと指でつまんでやった。
「なに?寂しくなっちゃった?」
真顔でもはっきりと泣き袋が出来ている百奈の顔。鼻はどっちかといえば丸っこい。
クソ……かわいいな。
頬をつまんでいた指を離し、その二本指で頬を撫でてやる。百奈の顔が赤くなって。百奈がその火照りを引かせるように顔を横に振る。
「……ううん。ぜんぜん。」
「そこは、『帰っちゃやだ。』じゃないの?」
「さっさと帰って。」
「あいあいさー。」
かわいいやつめ。とは絶対思わないからなコノヤロー。
一瞬、百奈を一人で帰らせても大丈夫かと思ったが、まだ20時前だし。とりあえず俺はリーマンの後を追った。



