カリスマCAMPARIソーダ




ただただ焦る気持ちが押し寄せてきたと思ったのに。次第に、隣に立つ鹿助君と擦れ合う腕あたりに意識を持っていかれる。


白い白衣越しに感じる、自分の赤い熱。


ビーカーからコップに移す手が、小刻みに揺れる。
   
     
「百奈、お腹鳴ってる。」

「鳴ってないって!」

「なに怒ってるの?」

「お腹が空いて怒ってるの!」

「支離滅裂。」 
     

紙コップに注いだ緊張感のある葛根湯。この効能は、きっと赤く染まった緊張感を和らげてくれるはず。


「やっぱ、漢方って嫌な感じが口に残る。」


大きくため息を吐く鹿助君を無視して、ノートに実験工程を書き留めていく。  

 
すると不意に下から覗き込んできた鹿助君が、じっと私を見つめ始めた。


「……なに?」

「明日の夜、暇?」

「……暇、じゃない。」

「ご飯行こっか。」

「……行かない。」


ふっと吐息で笑う鹿助君に、そっと顔を向けた。瞬間だった。


「っ!」


ちゅっと、一瞬だけど。―――キスされた。


「行こっか、ご飯。」

「なっ、」

「行こうね?ご飯。」

「わ、分かったから!離れてよぉ!」


手で鹿助君の顔を押しやれば、その手の平を舐められるという二次被害。


ならない。私は、好きなりませんから。  
           

「……ニッキの味がする。」


2度目のキスは、ニッキの強い葛根湯の味がした。