『こんな人だかりで恥ずかしくないの?』
『人だかりで見せておいた方が信憑性が出る。』
エレベーターに突き当たる一歩手前の壁際で、鹿助君が私の身体を押しやる。
スーツ姿で、オールバックにしたグレージュの髪がさらりと前に垂れ下がり。微妙に乱れた髪を、鹿助君がごつごつとした指先で掻き上げた。
鹿助君の行動一つ一つに、色気なんて感じないんだからね?
「ちょっとなに鹿助君!私、席取りで忙しいんですけど、」
「さっき、于羽《ゆわ》に色目使った?」
「は……、誰?」
「于ー羽。亘《わたり》、于羽《ゆわ》。」
「ああー、亘君ね。」
乙菱と一緒にピースした黒髪の子ね。どんな顔だっけ?
「色目?色目なら使ったよ?」
「なんで?」
「なんでって。かっこいいから?」
「俺は?」
「へ?」
「俺だっていい男じゃない?」
鹿助君、自惚れすぎなんだよ。私みたいじゃん!ああ反面教師ってこういうことをいうのかあ。
「はいはい、鹿助君、かっこいー」
「じゃあキスして?」
「……???」
「わお宇宙人みたいなお顔。」
そら宇宙人にもなるよ。うざいんだよ盾狼鹿助。



