「誰アレ?」
「亘君。亘《わたり》、于羽《ゆわ》君。」
「なん?好きなの?」
「違う。アプローチかけられまくってるの。」
「イケメンじゃん。いんじゃない?」
「う〜ん…。」
そうやってじっと見つめてるってことは、乙菱だっていいって思ってるってことじゃない?いいじゃん、いっちゃいなヨ。
「あ、やば、」
乙菱の熱視線に気付いたのか、その黒髪の亘君が私たちの方を見て小さく手を振ってくる。
ついでにお隣の鹿助君もこっちを見る。
「うっわぁ、手、振られちゃったよ〜」
「いいじゃん、振り返しときなよ。」
「なけなしのピース。」
「ピースかよ。」
亘君の片手振りに、平和の象徴であるピースで返す乙菱。かわいいな、乙菱。なんだかんだで亘君のこと好きなんじゃない?
『うっわぁ、東《あずま》さん、また亘君にちょっかいかけてる!』
『ほんっとあの子、油断も隙もないわ。』
後ろからそんなヒソヒソ声が聞こえて。私は軽く舌打ちをしてから、乙菱と一緒に亘君に向かってピースをした。



