あとは野となれ山となれ(改)

いつの間にか夕陽は沈み、あたりは暗くなっている。
結論から言うと、この大乱闘の末に意識があったのは萩乃と蝶子だけだった。

今坂を含めた悪党たちはみんな床に伸びている。無論、死んでいるのではなく気絶しているのだ。

萩乃は服と髪の乱れを軽く整えると、蝶子の元に向かい、手にしている日本刀で蝶子の腕を縛っている縄を切った。

「ふー、やれやれ。お待たせ蝶ちゃん」

「ううん、ありがとうお姉ちゃん。
あの、さっきはごめんね。助けに来てくれたのに、その刀のことで怒ったりして・・・」

「良いの良いの!蝶ちゃんが無事なら、お姉ちゃんはそれで良いんだから」

そう言って萩乃は少しススが付いた顔でにっこり笑った。
家宝を持ち出したことには驚いたが、自分の為に戦ってくれた姉の姿を見て、蝶子はやはり感謝を覚えた。

姉妹が平和に笑い合っていると、遠くからパトカーのサイレンが聞こえた。

「あら、さっきの騒ぎで通報されちゃったのかしら?」

「そうね。そういえば、お姉ちゃんはお父様になんて言ってここに来たの?」

「え?何も言ってないわよ」

「刀のことは?」

「やだ蝶ちゃん。そんなこと言えるわけないじゃない」

「じゃあもうすぐ警察が来たら、大和撫子であるはずの花札家の長女が、家宝を持ち出した挙句、悪党を1人で制圧したことがバレるってこと?」

「そうなるわね」

「それってまずいよね?」

「まずいわね」


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コンマ何秒かの沈黙の後、萩乃は右手で刀と鞘を、左手で蝶子の手を掴み、全力で走り出した。

「こういう時は逃げるに限るわよ!蝶ちゃん!」

「そうね!刀もしれっと戻しておこう!」

パトカーのサイレンをBGMに、花札姉妹は自宅へと全力疾走しながら夜の街に消えていった。



Fin.