あとは野となれ山となれ(改)

午前2時。
とあるお屋敷の前に、黒いワンボックスカーが止まった。
車の中で長髪の男と金髪の男が何やら怪しげな会話をしている。

「ヒヒヒ。ここがあの有名な花札家の屋敷かぁ!いかにも金持ちって感じの見た目だぜ」

金髪の男が屋敷を見上げるようにしながら愉快そうに笑う。

「あぁこれなら家の食器1つ盗むだけでも結構な金になりそうだな」

長髪の男も手を擦り合わせながらニヤつく。

「しかしよぉ、兄貴。大丈夫なんですかい?こんなデカい屋敷なら警備も厳重なんじゃ・・・」

「問題ない。防犯システムをハッキングして赤外線センサーと防犯カメラが作動しないようにしたからな」

「さすがです兄貴!」

「フッ。これくらい余裕だ。さぁ、早速乗り込むぞ。目的の宝刀は蔵に保管されている事は分かっている。音がしないように慎重にな」

男たちは塀に脚立をかけると、音もなしに地面に降り立った。
そのまま庭を突っ切って、お宝が所蔵してある大きな蔵の南京錠に手をかける。

「うわ!でっかい南京錠!お前、開けれるのかよ?」

「ヘヘッ任せて下さいよ!チョチョイのチョイで開けてやりますから!」

金髪の男は針金を取り出す。そして宣言通り、ものの数十秒でピッキングに成功した。

「さすがだな。よし、じゃあ早速宝刀を頂くとするか」

重厚な蔵の扉をゆっくりと開ける。
中は真っ暗なので懐中電灯を出そうとポケットに手を入れた。


その時、


突然蔵の電気がついた。昼間のような明るさにに目が眩む。

「うわっ!な、なんだ!?」

男は2人して手で目を覆う。
そして指の隙間から目を凝らすと、驚いた事に人がいる事に気が付いた。
目が慣れてくると、中にいたのは2人の女であることが分かった。

「はーい。どうもご苦労様。こんな夜中に人ん家に不法侵入とは良いお仕事だこと」

1人の女が壁にもたれながら男たちに向かって言う。20歳くらいの見た目で、170センチはありそうな細身の長身。腰まである黒髪のストレートロングヘアがかすかに揺れている。

そして視線を下やると、もう1人の女は机の前の椅子に座っていじっていたノートパソコンから顔を上げた。

「お姉ちゃん、防犯システムの復旧終わったよ。もうすぐ警備会社の方から警察に連絡が行くと思う」

座っているのでよく分からないが、おそらく身長はもう1人の女より少し低い。年齢は10代後半くらい。茶髪混じりのふわふわなボブヘアを耳にかけた。

「ありがと!さすがね!」

「これくらい余裕だよ。お父様に防犯システムの見直しを進めた方が良さそうね」

侵入者の男2人はこの状況とミスマッチな女2人の登場にしばし呆気に取られていたが、すぐに我に帰った。

「な、なんだお前たち!なんでここにいる!?」

「なんだはこっちのセリフよ。勝手に我が家に入ってきておいて何言ってるの?」

ロングヘアの女が呆れたように首を振る。
ボブヘアの方も同じような表情をしながらノートパソコンを閉じて立ち上がった。

「あなたたちがここに来るのが分かっていたから待ち伏せしていたんですよ。ダメですよ、なんのロックもかけずにハッキングしては。バレバレでしたよ」

「はぁ?何言ってやがる。俺のハッキングがバレるわけが・・・。ふん、まぁ良い。どうせハッタリだろ。女2人くらいなんてことはない」

「強がっているところ申し訳ないけど、もうすぐ警察が来るわ。大人しく取調べのシュミレーションでもしていた方が賢明だと思うけど?」

「へっ!舐めた口を聞けるのはそこまでだぜ。おい!お前たち入ってこい!」

金髪の男の掛け声で、蔵の外から黒い服を着た5人の男たちがニヤニヤした顔で入ってきた。

「俺たちが2人だと思ったら大間違いだぜ!お宝を運ぶには人手がいるからな。警察を呼んだと言うなら、お前らをふん縛ってそれを盾に強行突破させてもらう!」

賊たちはそう息巻くが、女2人の方は全く臆する様子がない。

「やれやれ、仕方ないわね。まぁ最近大学のレポートに追われて運動不足気味だったから丁度いっか」

ロングヘアの女はため息を吐きながらそう言うと、腕にしていたヘアゴムを咥えて髪を1つにまとめ上げた。

「じゃあ、ここからはお姉ちゃんにお任せして良いかな?私はどうもこういうのは苦手で」

「もちろんよ。危ないから下がっていてね」

余裕綽々に会話する女たちを前に頭に来たのか、賊たちは拳を固める。

「こいつら舐めやがって!すぐに後悔させてやる!おい、やっちまえー!!!」

うおーっ!!息巻いて賊どもは女2人に襲いかかった。



##########



「えーっと。では整理しますと、物音で目が覚めて姉妹で蔵に様子を見に来たところ、知らない男たちが何故か床に伸びていたと・・・」

警察官が手帳にメモをする。事情を聞かれていた黒髪ロングヘアの女性は瞳を潤ませながらわざとらしいくらいの弱々しい声で答える。

「そうなんですの。もうわたくしたち、それはそれは驚きまして。すぐに警察に通報した後、父や家の者を起こして周りましたの。怖かったですわぁ」

「本当に大変でしたね。妹さんの証言も同じですか?」

「・・・えぇ、まぁそうですね」

妹と呼ばれた少女は姉の方を意味ありげな目で見ながら答える。

「お2人とも、お疲れのところお話しありがとうございました。後日詳しく事情聴取をお願いすることになると思いますが、何とぞご協力の方をお願いいたします」

「えぇ。それはもちろんです」

「では、本日はこれで失礼します。ゆっくりお休みください」

「ありがとうございます。警察の皆さんもお疲れ様でした」

姉妹は2人揃って一礼する。
その姉の方は手を前に揃える際、指に巻かれた絆創膏をこっそり隠した。