幼なじみは私の秘密の吸血鬼【マンガシナリオ】

〇朝、姫花の家の前

姫花「いってきまーす」

姫花、自分の家から出て隣の家へ向かう
姫花、窓の方を向く

姫花「アルトー! 遅刻するよー!」

窓がガラリと開き、アルトが身を乗り出す

アルト「おおー」

アルト、窓から飛び降りて着地 ※一話と同じ流れ
姫花、ニコニコしながらアルトを見る

アルト「なんだよ、そんなにニコニコして……」
姫花「またアルトと登校できて嬉しいんだよ!」
アルト「そーかよ……」

アルト、照れて頬を赤くする

姫花「それはそれとして、窓から出てくるのは危ないからやめなって!」
アルト「べつに吸血鬼とハーフなんだからこれぐらい余裕だって」
姫花「誰かに見られたら大変でしょうが!」
アルト「はいはい」

アルトをたしなめる姫花
喋りながら登校する二人

???「………」 ※狩夜

そんな二人の姿を遠巻きに見詰める男(狩夜)の姿


〇朝、学校、姫花の教室(1-C)

姫花(アルトとも仲直りできたし……平和だなぁ)

みちる「おはよう姫花! 大ニュースだよ!」
姫花「え、なになに?」
みちる「転校生が来るんだって!」
姫花「えー、嘘ぉ!」

ざわついているクラス
先生が入ってくる

先生「あー、席着けー。今日は新しいクラスメイトを紹介する。入ってきなさい」

クラス中の視線が扉に注目する
ガラリと扉が開き、狩夜が入って来る
容姿の良さから色めき立つ女子たち

狩夜「十字狩夜です。親の都合で引っ越してきました」
狩夜「早く学校に慣れてみんなと仲良くなれれば嬉しいです。――よろしくお願いします」
姫花「……!」

挨拶の途中で狩夜と目が合う姫花
姫花、狩夜に少しだけ見惚れる

姫花(うわぁ……イケメンだ)
姫花(背も高いし……これは他のクラスまで話題になりそう)

先生「今日の日直は……鷹山だな。よし鷹山―、休み時間に十字に学校を案内してくれー」
姫花「え……わ、私……?」

狩夜、姫花の方を向いて微笑む

姫花(ええええええ!? 嘘でしょおおおお!?)


〇休み時間、姫花の教室(1-C)

アルト「姫花ー、いるー?」

アルト、姫花を尋ねに来る
しかしおらず、みちるが代わりに応える
みちる、ニヤニヤとしながら、

みちる「姫花はねー、転校生に学校を案内してるところー」
アルト「転校生? ああ、なんか女子が騒いでたような……」
みちる「そう! 来栖くんに負けないぐらいのイケメンなんだから!」
アルト「ふーん」

面白くなさそうなアルト


〇同時刻、図書室前

図書室前で狩夜に説明をしている姫花

姫花「で、ここが図書室。司書の先生が融通の利く人だから、望んだ本はけっこう入りやすいと思う」
狩夜「へえ」

姫花(狩夜くん……話は聞いてるんだけど、どこか心ここにあらずって感じなんだよね)
姫花(じゃあ図書館にまつわるあの話しちゃおっかな)

悪だくみするような表情で話し始める姫花

姫花「ちなみに狩夜くんってお化けとか信じるタイプ?」
狩夜「へ?」

すまし顔だった狩夜の表情が崩れる

姫花「昔から噂があるんだよね。金曜の放課後、図書室に最後まで残っていると、自分以外の知らない生徒が必ずいて……その生徒に喋りかけると……その姿が白骨死体になって笑い声を上げるんだって!」
狩夜「………」

驚かそうとした姫花と、きょとんとする狩夜
しばしの沈黙の後、狩夜が笑いだす

狩夜「ふっ……あはは。鷹山さんの脅かし方、ちょっとツボっちゃった」
姫花(うわ……笑い方もイケメンでかっこいいー……)
姫花「って、ツボっちゃったって失礼な!」

ひとしきり笑った後、狩夜から切り出してくる

狩夜「お化けかぁー……。鷹山さんはお化けを信じる人?」
姫花「え!? えー、そうだなぁ……」
狩夜「俺は信じるよ」
姫花「え、そうなの? なんか意外……」
狩夜「世の中不思議なことだらけだし……何より、お化けじゃないけど、もっと身近にいる気がするんだよね。モンスターが」
姫花「モンスター?」
狩夜「そう。例えば……吸血鬼(ヴァンパイア)、とか」
姫花「!」

不敵に笑う狩夜と、ギクリと焦る姫花

姫花「な、なんで吸血鬼……?」
狩夜「うん? 居そうだと思わない?」
姫花「そりゃ、居たら面白そうだけど……」

狩夜、姫花に近付きながら

狩夜「だよね」
姫花(ひ、ひえぇ~~~!)

アルト「おい!」

狩夜に迫られている姫花
そこに割り込むアルト
狩夜、驚きの表情でアルトを見る ※ターゲットだから

狩夜「君は……」
アルト「あんま姫花に近寄んなよ」

姫花を背に、守るように立ち、番犬のように威嚇するアルト

姫花「ちょ、ちょっとアルト! ごめん狩夜くん。アルトは色々と心配性で……」
狩夜「ああ、気にしてないよ。……二人は付き合ってるの?」
姫花「へ!? ま、まさか。幼なじみなの」
狩夜「へぇ……」

目を細め、意味深に笑う狩夜

狩夜「鷹山さん、ここまで案内ありがとう。あとは自分で周ってみるね」
姫花「え!? でも……」

ひらひらと手を振って去っていく狩夜
姫花、アルトににじり寄る

姫花「ちょっと! アルトが失礼な態度取るから狩夜くん行っちゃったじゃん!」
アルト「うるせー。あいつの方が先に姫花に失礼な態度取ってただろうが」
姫花「失礼じゃないよ! ただちょっと距離が近かっただけっていうか……」

思い出して赤面する姫花
それを面白くなさそうに見ているアルト

アルト「……あいつだろ? 噂の転校生」
姫花「ああ、もう噂になってんだ」
アルト「クラスの女子がキャーキャー騒いでたからよ」
姫花「あはは、やっぱり」

アルト、口を尖らせ嫉妬気味に尋ねる

アルト「おまえは?」
姫花「へ?」
アルト「おまえもああいうのがタイプなのかよ」
姫花「え……うーん。カッコイイとは思うけど……それ以上も以下もないよ?」
アルト「ふーん。ならいいけど。あんま隙見せてんなよ」
姫花「いたっ」

アルトからデコピンをされ、反論する姫花

姫花「なによ! アルトだってクラスの子と仲良くしてデレデレしてたくせに!」
アルト「べっ、べつにデレデレなんかしてねぇだろ!」
姫花「どーだか!」
アルト「……嫉妬してんのか?」

にやり、と笑いながら訪ねるアルト
顔を赤くさせ否定する姫花

姫花「嫉妬って……そんなんじゃないよ!」
姫花「そ、そんなこと言って、アルトこそどーなのよ!」

アルト、冷静な口調で、

アルト「……俺は嫉妬したよ」
姫花「え?」
アルト「姫花が知らない男に迫られてて……ボコボコにしてやりたいって思ったよ」
姫花「ちょっ……過激すぎでしょ」
アルト「そんぐらい嫌だったってこと」
姫花「……バカ」

アルトの真っ直ぐな物言いに照れる姫花

アルト「……なんかあいつ、いけ好かないんだよな」

アルト、狩夜のことを思い浮かべながらつぶやく

姫花「狩夜くんのこと?」
アルト「ああ」
姫花「珍しいね。アルトがそんなハッキリ言うなんて」
アルト「なーんか気に食わないっていうか……まあいいか」
アルト「それより姫花ぁ。数学今日当たりそうだからノート貸して」
姫花「またそうやって甘えてー。駄目に決まってんでしょ」
アルト「たーのーむーよー」

姫花に甘えるアルト

姫花(転校生が来て――)


〇学校、階段

姫花(なんだか新しいドキドキの予感がするような――)

階段の暗がりで一人立ち尽くす狩夜
その手には一枚の写真が

狩夜「……来栖アルト」

アルトの写真を眺めながら、その名を口にする狩夜