幼なじみは私の秘密の吸血鬼【マンガシナリオ】

〇夜、姫花の家、姫花の部屋のベランダ

姫花(アルト―――!?)

ベランダで姫花に口付けするアルト
驚きで固まる姫花
アルト、ゆっくりと唇を離し、姫花を見つめる

姫花「アル、ト……」
アルト「……おやすみ、姫花」

そっと姫花の頬を撫でるアルトの姿は、満月を背にした吸血鬼そのもの
アルト、隣の家までジャンプして帰っていく
茫然と立ち尽くした後、へなへなと腰を抜かし、口元に手を当てしゃがみこむ姫花

姫花(え……え!?)
姫花(待って、私、今……)
姫花(キスした!? アルトと!?)
姫花(「おやすみ」って……)
姫花(眠れるわけないでしょうがぁああああああ!)


〇朝、姫花の家、姫花の部屋

ベッドの上で仰向けになり、目を血走らせる姫花

姫花(一睡もできなかったんですけど……!?)

姫花、起き上がり着替えながら

姫花(いや……いやいや待て待て落ち着こう)
姫花(昨日のは実は夢だった?)
姫花(夢……じゃないよなぁ。確かに現実だった)

昨日のアルトとのキスを思い出しながら

姫花(アルト、目の色が変わってた)
姫花(満月だから吸血鬼の力が強まってたのかな)
姫花(吸血鬼の、力が……)

姫花「………」

立ち尽くし、閃く姫花

姫花(そっか! あれは吸血鬼の本能みたいなものか!)
姫花(なんかよくわかんないけどキスしたくなっちゃう! みたいな!)
姫花(だから満月の日はいつも学校休んで人を避けてたんだ!)

一人、納得する姫花 ※若干の現実逃避


〇朝、姫花の家の前

姫花(なーんだ、そんなことなら変に意識しちゃ駄目だよね)
姫花(いつもどおり、いつもどおり……!)

姫花「あ、おはようアルト!」
アルト「……はよ」

元気いっぱいの姫花に反し、どこかよそよそしいアルト
姫花、首を傾げる

姫花「どうしたの? 体調悪いの? それとも不機嫌?」
アルト「……べつに、なんでもねーよ」
姫花「ええ……」
姫花(どう見てもなんでもあるじゃん!)

先に行くアルトに慌ててついて行く姫花
アルトに何か喋りかけるが、生返事のアルト


〇朝、学校、姫花の教室前(1-C )

教室前で立ち止まるアルト
姫花から目を反らしている

アルト「姫花」
姫花「え?」
アルト「今日、一人で帰るから……」
姫花「あ、うん……」

自分の教室(1-A)に向かうアルト
その背中を見送る姫花

姫花(べつにいつも一緒に帰ってるわけじゃないけど……)
姫花(先にそう言ってくるってことは)
姫花(やっぱりアルト、何か怒ってる……!?)


〇午前、アルトの教室(1-A)

体育の授業のため、着替えているアルト(男子たち)
アルト、頭を抱える

アルト(やっ……ちまった!!!!!!!)
アルト(俺、なんてことを……!!!)

姫花にキスしたシーンを思い返し、顔を赤くするアルト

アルト(昨日はなんだか無性に姫花に会いたくてたまらなくて……)
アルト(目の前に姫花がいて、ようやく会えたと思ったら……)
アルト(俺……)

再び姫花とキスしたシーンを思い返し、うずくまるアルト
心配するクラスメイト

男子A「お、おい来栖、大丈夫かよ」
アルト「平気……」
男子B「どう見ても平気じゃねーんだけど」

トボトボと歩きながら校庭へ向かうアルト
視線を感じて校舎を振り返ると、授業を受けている姫花が笑顔で手を振ってくる

アルト(あ、あいつ……)
アルト(なんで!? なんであんなに普通なんだ!?)
アルト(俺は一睡もできなかったんだぞ!?)

ぷいっと姫花を無視して校庭に向かうアルト


〇午前、姫花の教室(1-C)

アルトに手を振ったが無視されショックを受ける姫花

姫花(や……)
姫花(やっぱりなんか怒ってる!?)
姫花(えええ、なんでぇ……?)
姫花(思い当たるのは昨日のキス……だけど……)
姫花(だってあのキスは、ただの吸血鬼の本能ってやつでしょ……!?)
姫花(あ……も、もしかして……)
姫花(私と、だから?)
姫花(私とキスしちゃったから怒ってるの……!?)
姫花(何それ……そんなの全然……)

先生「という式を用いるわけだが……鷹山、わかったか?」
姫花「ぜんっぜんわかりません!」

勢いよく答えて我に返る姫花
クラス中に注目されている

先生「では鷹山がよくわかるようプリントを五枚、宿題に出しておこうな」
姫花(そ、そ、そんなぁ~~~~~~~!)
姫花(アルトの馬鹿ぁああああああああ!)※とばっちり


〇夕方、アルトの家、リビング

アルトの家にお邪魔し、満月の日のことについて訊きにきた姫花
リビングのテーブルの上には、アルト母が用意した紅茶が置かれている

アルト母「満月の日?」
姫花「はい。その日になると吸血鬼の本能が強くなる、って昔聞いたんですけど……」
姫花「具体的にはどんな感じなのか知りたくて……」

紅茶を飲みながら会話する二人

アルト母「私もパパから聞いたぐらいにしかわからないんだけど」
アルト母「昔の吸血鬼は、血を求めたり人間を襲いたくなったりしたそうなの」
姫花「お、襲いたくなったり……!?」
アルト母「だいぶ昔の話みたいだけどね」
アルト母「今は異様に人恋しくなったり誰かの傍に居たくなったりっていう……なんていうか酔っぱらった状態、みたいな?」
姫花(よ、酔っぱらった……!?)
アルト母「だから昨日はパパも、かなり甘えたさんだったんだから」

ハートを飛ばして惚気るアルト母
そんなアルト母を前に考える姫花

姫花(酔っぱらった……)

昨夜のキスシーンを思い浮かべ、一人納得する姫花

姫花(なるほど! アレは酔った状態だったわけかぁ!)
姫花(きっとたぶん、猫がじゃれつくようなそんな感じだったんだね!)

そこでアルトが帰宅する

アルト「ただいまー……って!?」

アルト、姫花に気付き顔を引き攣らせる ※照れている

アルト母「おかえりぃ。姫花ちゃん来てるわよー」
姫花「お邪魔してまーす」
アルト「~~~~っ!」

顔を赤くして二階の自分の部屋へ行ってしまうアルト

アルト母「あら、どうしたのかしらぁ」
姫花「………」


〇アルトの家、アルトの部屋

アルトの部屋の扉をノックする姫花

姫花「アルトー、入るよー?」
アルト「なっ、なんだよ……!」

慌てた様子のアルト
姫花、扉の前で立ち尽くす

姫花「アルト、なんか今日変だよ?」
アルト「はあ!? そんなこと……」

アルト、口を尖らせながら姫花を見る

アルト「……おまえこそ」
姫花「え?」
アルト「おまえこそ、なんで普通にしてるわけ?」
姫花「え、何が?」
アルト「だって俺……昨日おまえにキスしたんだぞ!?」

真っ赤になって叫ぶアルト
姫花も顔を赤くするが、誤魔化すように笑う

姫花「あー……あはは、それはあれでしょ? 満月の日だから吸血鬼の力が強くなってたっていうか、酔ってたっていうか」
アルト「よ、酔ってた……!?」
姫花「へ、変に意識なんかしたってしょうがないじゃん!」
姫花「私たち、変わらず幼なじみでしょ!?」

お互いの変化を否定し、幼なじみに固執する姫花
一方、キスからお互いの変化を意識し始めていたアルト

アルト「……やめる」
姫花「へ?」
アルト「だったら、幼なじみ、やめる!」
姫花(え……えぇ~~~!?)