幼なじみは私の秘密の吸血鬼【マンガシナリオ】

〇朝、アルトの家

姫花「いってきまーす」
姫花「アルトー。起きてるー?」

家を出て、登校のためアルトの家へ迎えに行く姫花
アルトの家から出てきたのはアルトの母親

アルト母「姫花ちゃんおはよう~」
姫花「おばさん! おはようございます。アルトは?」
アルト母「アルトはね、今日はお休み」
姫花「えっ……どこか悪いんですか?」
アルト母「ううん。そうじゃなくて……今日は満月だから」
姫花「あー……」

一人で学校へ向かう姫花

姫花(昔、アルトから聞いたことがあった)
姫花(満月の日は吸血鬼の力が強まるから、万が一を考えて人と接触しないように過ごしているんだとか)
姫花(そっか、今日満月か……)
姫花(そういうとこ吸血鬼っぽいっていうか。いや、吸血鬼なんだけども)


〇回想

アルトにお姫様抱っこされ、夜景を一望する姫花

〇回想終了


姫花(あの時のアルト、映画で観た吸血鬼と同じだった……)
姫花(格好良かった……なんて……)

顔を赤らめていることに気付き、ぶるぶると頭を横に振る姫花

姫花(吸血鬼の力が強まるってどんな感じなんだろ……)
姫花(お見舞いとか行った方がいいのかな……)


〇朝、学校、姫花の教室(1-C)

みちる「おはよー姫花」
姫花「おはよう」
みちる「今日は旦那と一緒じゃないの?」
姫花「ぶっ! だ、旦那って……」
姫花「アルトは風邪でお休みだよ」
みちる「えっ、そうなの? お見舞い行かなきゃじゃーん」
姫花「あはは」

授業を受ける姫花

姫花(吸血鬼の力が強まるってことは、やっぱり血が欲しくなっちゃうってことなのかな)
姫花(……べつに私の血なら、あげてもいいんだけどな)
姫花(今は私が『ツガイ』だけど……いつかはアルトも、他の人の血を求めるようになるのか……)

アルトが他の女性に吸血行為をしている図を想像し、落ち込む姫花

姫花(やっぱり恋人を『ツガイ』にするのかな)
姫花(アルト、どんな子を選ぶんだろう)

小学校、中学校時代のアルトを思い返す姫花

姫花(アルト、昔からモテたよね)
姫花(でも彼女作ってること無かった)
姫花(いっつも「俺、幼なじみ(姫花)いればいーし」とか言ってたなぁ)

姫花「………」

姫花(アルトに彼女ができる、かぁ)
姫花(なんか嫌、だな、なんて)
姫花(……なんだろ、この気持ち)
姫花(幼なじみ(アルト)をとられるの、嫌……なのかな?)


〇昼休み、姫花の教室(1-C)

机をくっつけてみちるとお弁当を食べている姫花
アルトにメッセージを送る

姫花『元気してる? 体調悪くない?』
アルト『おう。体調悪いわけじゃないから大丈夫』
姫花『それなら良かった』
アルト『俺がいないからって寂しがってんじゃねーよ』
姫花『自意識過剰~!』

みちる「ちょっと姫花ぁ。スマホ見ながら何ニヤニヤしてんの~?」

姫花、顔を上げて焦る

姫花「に、ニヤニヤなんてしてないよ!」
みちる「してたしてた。まさか彼氏できたのー?」
姫花「違うってば! アルトとLINEしてただけ!」
みちる「へぇ~」

お弁当を食べる姫花とみちる

みちる「『幼なじみ』ってさー、ぶっちゃけどんな感じなの?」
姫花「どんな、って?」
みちる「小さい頃からの付き合いがあるわけでしょ? 家族みたいな感じ?」
姫花「そー……うだねぇ? 家族みたいな感じ、かなぁ?」

姫花、幼い頃のアルトとの思い出を振り返る

姫花「お互い一人っ子だけどさ、兄弟ともちょっと違うんだよね」
姫花「なんていうか……」
姫花「傍に居て、当たり前っていうか」
みちる「キャー! 何その関係~、うらやましい~!」
姫花「いやっ、そんないいもんでもないよ? アホみたいな喧嘩したことだってあるし」
みちる「でも特別な関係だよねー」

みちる、ずいっと乗り出し姫花に顔を近付ける

みちる「ねえ、ぶっちゃけさ」
姫花「う、うん?」
みちる「来栖くんのこと、男として意識したことないの?」
姫花「っ……!」

驚き顔で、口をパクパクと動かす姫花
ニヤニヤと笑っているみちる

姫花「なっ……無いよ。無い無い!」
みちる「一度も~?」
姫花「それは……」

昼休みが終わるチャイムが鳴る

みちる「あー、いいところでー」
姫花「もう! からかわないでよ!」
みちる「へっへっへ」
みちる「でも私が姫花だったら、あんなかっこいい幼なじみ、男として意識しない方が難しいなー」
姫花「そ、そういうもん……?」
みちる「うん」

お弁当を片付ける二人

姫花(そういえば前にハントさんにも言われたよね)
姫花(『俺だったらふとした時に意識しちゃうかも』……って)
姫花(……そういうもん、なのかなぁ?)


〇夕方、放課後、廊下

掃除を終えて帰ろうとする姫花
1-A(アルトのクラス)の前を通り、話し声が聞こえてきて立ち止まる

夢乃「今日アルトくんお休みでやる気出なかったなぁ」
姫花(この声……この間、私とアルトの関係を聞いてきた愛牧さんだ)

二話の夢乃とのシーンを思い出す姫花

女子A「わかるー。来栖くん、いるだけで目の保養だよねー」
女子B「夢乃、やっぱ来栖くん狙ってるの?」
夢乃「まあねー」

姫花(やっぱり愛牧さん、アルトのこと好きなんだ……!)

女子A「でもなんか幼なじみとかいうのがいるんでしょ?」
女子B「え、だる……」

姫花(うわ……私の話だ……っ)

女子B「夢乃のライバルじゃん。どうすんのー?」
夢乃「んー……てゆーか」
夢乃「幼なじみってことは恋愛対象外ってことでしょ?」
夢乃「ライバルなんかになり得ないし」

姫花「………」

茫然としながら立ち去る姫花


〇夕方、姫花の家、リビング

テレビを観ながらボーっとしている姫花

姫花(そう……だよね)
姫花(わざわざ『幼なじみ』って宣言したってことは、裏を返せば『恋愛対象じゃない』って言ってるようなもんだよね)
姫花(な……なぁんだ。逆にスッキリ……)
姫花(スッキリ……しないのはなんで?)

テレビの中では笑い声が聞こえているが、反比例して落ち込んでいく姫花


〇夜、姫花の家、姫花の部屋

寝る支度を済ませたパジャマの姫花
ベッドに横たわる

姫花(なんか今日、一日中アルトのこと考えてた気がする)
姫花「………」
姫花「……さみしいよ。アルトがいないと」

ボソッと呟く姫花
その時、窓を外から叩く音が聞こえる

姫花「!?」
姫花(え……え!? なに!? 泥棒!?)

怯える姫花
声が聞こえてくる

アルト「姫花……姫花……」
姫花「アルト!?」

カーテンを開けると、ベランダにアルトがいる
窓を開ける姫花

姫花「アルト、どうしたの……」
姫花(あ……目の色が、違う……)
姫花(吸血鬼の力が強まってる色だ……)

アルト「姫花……」

姫花の手を取り、見つめ合うアルト
満月を背にして立つその姿は、吸血鬼そのもの

アルト「なんか、凄くおまえに会いたくてたまらなくて……」
姫花「な、何言って……」

アルトの真っ直ぐな言葉に照れる姫花
それでもアルトは目を反らさない

アルト「姫花、俺……」
姫花「何? アル……」

アルト、姫花に口付ける

姫花(……え?)