月花のナイトに寵愛される

……だけどそれ以上触れられる気配がなく、薄く目を開いた。

すると彼は私の足から手を離し、そのまま体も起こす。
やっと広くなった距離に息を吐くと、目の前の男はさっきまでのことが嘘のようににこりと笑った。


「ごめんごめん冗談だよ」
「……え?」


展開についていけず思わずぽかーんとしてしまう。
冗談という言葉の意味はわかるけれど、彼の真意が全くわからない。

そんな私を見て彼は困ったような表情をする。


「そこまで怖がらせるつもりはなかったんだ、ごめんね」
「え、いえ……私は、大丈夫、です」


正直大丈夫ではないけれど、私にはそれを言う資格がない。
だけど嘘を言ったところで彼は首を振るだけだった。


「大丈夫じゃないでしょ、手も足も震えてるのに」


そう言われて初めて自分の惨状に気づいた。
視線を下に向ければ彼の言う通りプルプルと震えている。

恐怖で手や足が震えるって本当なんだ、なんてどこか他人事のように思った。


「これは……寒いから、です」
「……きみがそういうことにしたいならそれでいいよ」


寒いのは嘘じゃないだろうし、と言いながらも彼の表情は怪訝そうだ。

さっきローテーブルに置いたカップを取り「飲んで」と手渡される。