月花のナイトに寵愛される

人を避けて着いた場所は、別棟に繋がる渡り廊下だった。
ほかに人がいないことを確認すると彼の手が離れる。


「あの、不法侵入じゃない、よね……?」


少し不安になって聞くと、湊は眉を吊り上げた。


「違うよ! れっきとした生徒!」


がさごそと制服のポケットに手を入れたかと思ったら、目の前に学生手帳が差し出された。

そこには顔写真付きで『菊月 湊(きくづき みなと)』と書いてある。


「ほんとだ……ごめん」


謝ると湊は「いいよ」と言ってくれ、そのままポケットになおした。

本当はどちらかというと疑っていたわけじゃなくて、信じられないだけだったんだけど……
まあそんなの湊にとってはどちらも同じことか。

いまさら失礼なことを言ってしまったと申し訳なく思っていると、湊が口を開いた。


「それで本題なんだけど」
「え? うん」
「なんで俺のこと置いていったの!」


湊はまた怒った顔になってしまった。
昨日はあんなに笑いかけてくれていたのに。