月花のナイトに寵愛される



須戸花町を歩き、見覚えのある景色に行きついて、そのあとは迷うこともなく学校に着いた。

もしかしたら家出をしたことについて、母親から学校へ連絡しているかもしれないと思ったけれど、もちろんそれは杞憂に終わった。


私にとっては家出中というとんでもない非日常のはずなのに、それを知らせる人がいないせいで、先生にも怒られることはなく、友だちに心配されることもなく時間が過ぎていく。

……まあ、友だちといっても特別仲がいい人がいるわけじゃないんだけど。


「ふあ~……」


昨日あまり寝ていないせいですぐに眠気が襲ってくる。
だけど授業中に寝るなんて論外だ。

となると眠るのは休み時間の今しかない。


「えっ、嘘でしょ」
「今日登校してるの!?」


なにやら周りが騒がしいけれど、そんなことを気にする余裕もなく意識が落ちていく。


「誰か探してるんですか?」
「近くで見るとめっちゃイケメン~っ!」


かくん、と首の力が抜けたとき――


「あ、いた! 依桜!」


名前を呼ばれて意識が急浮上する。