月花のナイトに寵愛される

ザーっと規則正しい雨の音の中、パチャパチャと人が近づいてくる音がした。
そして降り続けていた雨が止む。


「ねえきみ、大丈夫?」


思わず顔を上げると、心配そうにこちらを覗き込む男性がいた。
右手にはビニール傘を持っている。

綺麗な人、だと思った。
この人なら、そう思って口を開く。


「……たすけて、ください」


常識的に考えてどうなるかなんて分かったうえだった。
それでももう、今の私に考えられる選択肢はこれしかない。
差し出された左手をとる。

彼の手は温かくて、それが無性に苦しかった。