月花のナイトに寵愛される

「この町じゃ常識あるヤツの方が珍しいよ。着替え持ってきてくれたヤツだってそう。普通の持ってきてって言ってるのに話聞かないし」


そういう彼は不満そうだ。
まさか知らないところでそんな配慮をしていてくれたとは。


「だから依桜は気にしなくていいよ。まあでももし会ったらそのとき言ってあげて。喜ぶと思うからさ」


優しい表情で微笑む彼を見れば、その女性もきっといい人なんだろうとわかる。
どういう関係性なのかはわからないけれど、聞く勇気もない。

はい、とただ頷いた。


「それと、俺のことは湊さんじゃなくて湊って呼んで」

「えっ」

「あと敬語もいらない。堅苦しいのいやなんだ」


まさかそんなことを言われるとは思わず言葉に詰まる。
彼はそんな私を見て察したのか苦笑した。


「それがここに住むただひとつの条件ね。あとはお金も奉仕も何もいらない」


そういう風に言われてしまえば従うしかない。
勇気を集め、口を開いた。


「……み、なと」
「うん、合格。じゃあ契約完了だね」


冗談めかして笑う湊はなんだか嬉しそうに見えた。