「アンタら、相変わらず仲良いよね。いっそのこと、付き合っちゃえばいいのに」

 私と虎太郎がくだらない言い合いを続けていると、充希が横からそんなことをいってきた。

「やだよ、虎太郎なんて」
「俺だって知菜なんかお断りだって」

 充希のように、二人が付き合えばいいのに、というのは昔からよく言われてきた。

 私と虎太郎は小学校五年生の時からの腐れ縁。

 同じクラスになって最初の席替えで隣の席になって以降よく話すようになって、当時男勝りだった私はよく男子と混じってサッカーをしたり、虫取りをしたりと活発に活動していて、虎太郎とも考え方とか話が合うから自然と仲良くなった。

 それは中学になっても変わらなくて、奇跡的にクラスが三年間同じだったこともあってよく一緒に行動していた。

 初めこそ周りからは『付き合ってる』と噂されたりもしていたけど、私と虎太郎はあくまでも『友達』だと答えてきたし、私たちの間に、『恋愛感情』は存在してなかった。

 だけど、中学三年の秋くらいに、私の心に変化が訪れた。

 それは、初めて虎太郎が同級生から告白されている現場を目撃した時で、もし万が一虎太郎が誰かと付き合ってしまったら、『友達』の私たちは傍に居られなくなってしまうのでは? と気付く。

 傍に居られれば、『クラスメイト』でも『友達』でも『腐れ縁』でも良かったけど、異性の『友達』なんて、『恋人』が出来てしまえば一緒に居ることが難しくなると思ったら胸の奥がモヤモヤした。

 そして、私は気付いた。

 いつの間にか私は虎太郎の事を、好きになっていたことに。

 だけど、

 恋愛にも、異性にも興味の無い虎太郎。

 私も異性だけど、付き合いの長い私だけは特別だと言っていた。

 その『特別』という言葉すら、好きだと気付くと、勘違いしてしまう程に舞い上がる。

 結局、高校も同じになって、クラスも一緒。

 何だかんだで、いつも傍に居る。

 高校に入ってからというもの更に格好良くなった虎太郎はとにかくモテる。

 背は高くて頭も良くて、運動神経も良い。

 言い方はキツいところもあるし、少し人見知りで無表情だし、おまけにつり目がちで目つきも悪く見えるし、自分のことをそこまで人に話すタイプじゃ無いけど、そういうクールなところが人気らしかった。