悪魔の様なキミに恋してる

 突然、そんな言葉を投げ掛けられ、

「……え?」

『昨日』『見ていた』というワードに心当たりのある私は、彼のその問いに言葉を詰まらせる。

「その反応、もしかして、俺が気付いてないと思ってた? 残念、気付いてたよ、初めから」
「あ、あの……ごめんなさい、盗み見るつもりは無かったの! ただ、偶然通りがかった時に男女の言い争う声を聞いて、何かあったのかと気になって……それで……」

 盗み見ていた事がバレていたと分かった私はそれが偶然だった事、盗み見するつもりが無かった事を伝えて謝罪するも矢地くんは、

「別に、経緯なんてどうでもいいよ。見られてたっていう結果が全てだし」

 そんな風に素っ気なく言い放つと、これまでの態度を一変させて昨日見たあの冷たい表情を向けてきて、

「迂闊だったわ、まさかあんなところを同僚に見られるなんて。まあ、あれは俺の落ち度でもあるから仕方ないけど、昨日の事、バラされると困るんだよね」

 私の方へ一歩、距離を縮めながら昨日の事をバラされると困ると告げてくる。

「わ、私はそんな事、誰にも言わないわ……」
「どーだか。俺、女の言う事ってイマイチ信用出来ないんだよなぁ」
「そ、そんな言い方……矢地くんの周りの女の子はそうだったのかもしれないけど、一緒にされたくない」
「ふーん? 羽瀬さんって結構言うね。まあ確かに、羽瀬さんって真面目だし、人の悪口とかも言わないよね」

 私が一歩下がると、彼はまた一歩、話をしながら私との距離を詰めてくる。

 彼は昨日の事を周りに知られたくないようで、私が言いふらすのではないかという事を懸念しているらしい。

 だけど、私はそんな事を周りに話したりはしないし、するつもりも無い。

 そりゃあ確かに矢地くんの変わりようには驚いたけれど、それを言いふらしたところで私に何のメリットも無いどころか、普段の彼を知っている人にそんな事を伝えたところで、きっと信じてもらえないと思うから。