悪魔の様なキミに恋してる

 業務は特に滞りなく進んでいき、午前中、営業で外回りに出ていた矢地くんが帰って来ると、こちらへ近付いてくるのが見える。

「羽瀬さん、明日の会議に使う資料作成を頼みたいんだけど、大丈夫?」
「あ、うん、平気だよ」
「助かるよ。それじゃあこれを元に纏めてもらえるかな?」
「分かった」

 会議に使う資料作成を頼まれて纏めるのに必要な書類を受け取ると、矢地くんは自分の席に戻って行く。

 彼には何かと仕事を頼まれる事が多くて、その度に女子社員たちから睨まれ、疎まれる。

 正直、私じゃなくて他の女子社員に頼めばいいのにと思うけれど、同期だから頼みやすいのか、大体まずは私に頼んでくる。

 あくまでも仕事だから仕方が無いと割り切って受けているけど、周りは納得していなくて心底鬱陶しい。

 ふと、先程受け取った資料を捲っていくと、【昼休み会議室に来て欲しい】と書かれたメモが一緒に挟まっていた。

(何、これ?)

 メモを見つけた瞬間、周りを見渡した後に席に着いた矢地くんに視線を向ける。

 すると、私がメモに気付いた事を悟ったのかニコッと笑顔を向けると同時に人差し指を口元に持っていき、『内緒』だと言わんばかりの仕草をする。

 何故わざわざ? と不審に思いつつも、見つけてしまった以上無視する事は出来ないと、昼休みにメモにあった通り会議室へ行く事にした。


「ごめんね、わざわざ呼び出して」

 昼休み、指定された会議室へやって来た私を見た矢地くんは変わらずいつも通りの笑顔を向けてくる。

「あの、どうしてわざわざ呼び出したりしたの?」

 こんな風に呼び出しをされた事など無かった私は、ただただ戸惑うばかり。

 呼び出された理由も分からず、何故呼び出したのかを彼に尋ねると、矢地くんは表情を崩す事なくこう言った。

「――昨日、見てたよね?」と。