翌朝、職場に着いて四階にある更衣室へ向かう為にエレベーターへ乗り込んだ私が扉を閉めようと『閉』のボタンに指を乗せたところで、
「待って、俺も乗る」
そう言いながら小走りでやって来たのは矢地くん。
昨日の事が無ければ、いつも通り『おはよう』と挨拶を交わすだけで済んでいたのだけど、昨日あの光景を見てしまったせいか、私の中に気まずさがあってどこかぎこちなさが生まれてしまう。
エレベーターには私と彼の二人きり。
早く四階に着いて欲しいと思いながら進んでいく階数の表示をボーッと眺めていると、
「――羽瀬さん」
「え?」
「着いたけど、降りないの?」
いつの間にかエレベーターは四階に着いていて、心配そうな視線を向けた矢地くんに声を掛けられてしまう。
「あ、ごめんなさい、ちょっと考えごとしてたから気付かなくて」
「いや、全然。具合でも悪いのかと思って心配しちゃっただけだよ。何でもないならいいんだ。それじゃあ、また後で」
「あ、うん」
こうして心配してくれている矢地くんはまさにいつも通り、女の子に優しい紳士な男の子。
昨日見た彼とは全くの別人。
もしかしたら、あれは彼に似ていただけの他人なのでは?
そんな考えすら頭の中に浮かんでいた。
着替えを終えて三階にある営業課のフロアへやって来た私は自分のデスクに座って準備をする。
私より先に着替えを済ませて来ていた矢地くんはやっぱりいつも通り女子社員たちに囲まれていた。
(昨日のあれは、やっぱり他人の空似だったのかな?)
彼を見間違える事は無いと思うのだけど、あんなに優しい彼と昨日の冷たい彼ではあまりにも違い過ぎる。
相手の女の人は彼の名前を口にはしていなかったから、昨日見た彼が矢地くんだったという確証も無い訳で、やっぱり他人の空似なんだと納得した私は始業時間開始のチャイムと共に仕事に取り掛かった。
「待って、俺も乗る」
そう言いながら小走りでやって来たのは矢地くん。
昨日の事が無ければ、いつも通り『おはよう』と挨拶を交わすだけで済んでいたのだけど、昨日あの光景を見てしまったせいか、私の中に気まずさがあってどこかぎこちなさが生まれてしまう。
エレベーターには私と彼の二人きり。
早く四階に着いて欲しいと思いながら進んでいく階数の表示をボーッと眺めていると、
「――羽瀬さん」
「え?」
「着いたけど、降りないの?」
いつの間にかエレベーターは四階に着いていて、心配そうな視線を向けた矢地くんに声を掛けられてしまう。
「あ、ごめんなさい、ちょっと考えごとしてたから気付かなくて」
「いや、全然。具合でも悪いのかと思って心配しちゃっただけだよ。何でもないならいいんだ。それじゃあ、また後で」
「あ、うん」
こうして心配してくれている矢地くんはまさにいつも通り、女の子に優しい紳士な男の子。
昨日見た彼とは全くの別人。
もしかしたら、あれは彼に似ていただけの他人なのでは?
そんな考えすら頭の中に浮かんでいた。
着替えを終えて三階にある営業課のフロアへやって来た私は自分のデスクに座って準備をする。
私より先に着替えを済ませて来ていた矢地くんはやっぱりいつも通り女子社員たちに囲まれていた。
(昨日のあれは、やっぱり他人の空似だったのかな?)
彼を見間違える事は無いと思うのだけど、あんなに優しい彼と昨日の冷たい彼ではあまりにも違い過ぎる。
相手の女の人は彼の名前を口にはしていなかったから、昨日見た彼が矢地くんだったという確証も無い訳で、やっぱり他人の空似なんだと納得した私は始業時間開始のチャイムと共に仕事に取り掛かった。

