エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 実家に帰ってきてから三週間ほど経ち、明日は私の二十八回目の誕生日を迎える。
 突然帰ってきた私を少し驚きながらも笑顔で歓迎してくれた二人は、元気付けるように毎日お料理をたくさん作ってくれ、お弁当まで用意してくれた。
 それに、通勤時間は長くなったけれど麻美の家とは近くなり、事情を話してからは頻繁にメッセージをくれ、明日の誕生日もお祝いしてくれると言う。
 天宮さんにも食事に誘ってもらったり、この間はお家に招いてもらいお休みだった天宮先生が作って下さったケーキを頂いた。
 誕生日もお墓参りも一緒には行けないとメッセージが来た時は、わかっていたけれどやっぱり寂しくて布団をかぶって気が済むまで泣いた。
 彼の事を考えない日などないしその度に寂しくなり落ち込んでいたけれど、日々周りの人達の優しさで私はなんとか持ち堪えていた。 

 そして迎えた三月二十一日。
 毎年この時期は桜が綺麗に咲き誇り、いつもお母さんのお墓は花びらがたくさん降り積もっている。見上げると真っ青に澄んだ空が見え、手を伸ばせば吸い込まれてしまいそうなほど。不思議と私の記憶がある限りこの日に雨が降っていた事は一度もなく、いつも澄み渡った空はお母さんが雲を避けてくれているよう。
 小さい頃はお父さんに肩車をしてもらい、思い切り手を伸ばせばお空のお母さんの所に行けるのだと本気で思っていた。幼さゆえの純粋な疑問で、どうしたらお母さんのいるお空に行けるの?と父に聞いた事があり、曖昧な答えとともに悲しい顔をされた事は今でも覚えている。
 今年は柊哉さんと一緒にこられると思っていたけれど、聞いた話によると白河病院でのオペは二十三日に予定されており、その翌日からは学会に参加するため渡加するそう。
 本当に忙しくて一緒に来られないのだとわかり不謹慎にも少しホッとしている自分がいる。柊哉さんは大変な時期だし、彼の事は今でも信じているけれど...。

 母方の祖父母と共に降り積もった花びらを片付け墓石を綺麗にし、水を入れ替え花を手向けてから手を合わせ目を閉じる。
 お母さん、私は幸せになってもいいの? 幸せに、なれるのかな...?