エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

柊哉side
 実家には明かりが灯っていて、久しぶりに使う鍵をキーケースから取り出す。
 「...柊哉、どうしたんだ?」
 「...いや、何もない。今日はここに泊まる」
 実家に泊まる事なんて、家を出てから一度もなかった。明らかに不自然な俺を、父さんは怪訝な顔をしながらも受け入れてくれたよう。
 「...夕食は食べたのか?」
 「食べてきた、シャワー借りるよ」
 「借りるって...ここはお前の家なんだから好きにしなさい」
 風呂から出て向かったのは、母さんが生前使っていた部屋。今は片付いていてほとんど物はない。クローゼットから遺品が入った箱を取り出してそっと蓋を開けると、二十六年ぶりに見る母さんが当時使っていた品が入っていた。自分でも何故こんな事をしているのかわからないが、しばらくそれらを眺め母さんの笑顔を思い出していた。
 そして自分の部屋へ戻り、手帳から色褪せたクローバーを取り出す。俺たちは、このクローバーをもらったあの日が初対面ではなかったんだ...。運命って、何なんだろうな...。
 優茉との思い出が頭に浮かび、目を閉じても彼女の笑顔が瞼の裏に映り消えてくれない。気がつけば、頬には冷たい物が流れぽたっと地面に落ちる。涙を流したのは、きっと優茉にこのクローバーをもらったあの日以来だ...。