週明け、出勤するとナースステーションが少し騒ついていて、どうやら香月先生の話題で持ちきりのよう。イケメンでその上腕もいいなんて...本当にそんな人がいるのかな?まるで小説に出てくる主人公のようだなぁと、その時は他人事のように思っていた。

 申し送りが終わり作業に取りかかろうとした時、外科部長の橘先生に呼び止められ一枚の紙を渡される。
 「これ、院長から預かった香月先生のスケジュール。もうオペの依頼が殺到してるみたいでね。院長の話だと昨日帰国したばかりらしいけど、明後日からのスケジュールはいっぱいだ。人気者は大変だね〜」そう他人事のようにははっと目尻に皺を作りながら笑う橘先生は、院長の知り合いで長年この病院で働いており息子の香月先生の事も良く知っているそう。
 「戻ってきて早々これだもんなぁ。仕事ばかりしていて心配だと院長も言っていたよ。もういい歳なのに結婚もしないつもりかってね」
 「香月先生ならお相手に困る事なんてなさそうですけどね。ハイスペックすぎて近寄りがたい感じはありますけど」
 「ははっ、そう見えるかい?見た目だけじゃなく中身もいい奴なんだけどなぁ」
 二人の会話を聞きながら紙に書かれた文字に目を落とすと、確かにオペの予定がかなり埋まっている。それも、難度が高いと言われる頭蓋底脳腫瘍、脳動静脈奇形などベテランの先生が担当するような症例ばかり...。本当にすごい先生なんだなぁと思いながら、パソコンのスケジュール管理を開き香月先生の分を追加していった。