エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 翌日、仕事が終わり柊哉さんとロビーで待ち合わせをして二人で院長室へと向かった。
 エレベーターが上昇する毎に緊張も増し、ドアの前に立つ頃にはピークに達していた。口数の少ない私の頭を撫で「大丈夫だよ」と優しく微笑んだ後、ノックをして中へ入った。
 すると、応接セットに座っている院長とその向かい側には花柄のパジャマにカーディガンを羽織った女性の姿があった。
 「あら、柊哉先生。香月院長が戻られたって聞いたから、ちょっとお邪魔してたのよ。そちらの方は...もしかして宮野さん?」
 「ほ、北条さん...?」
 その声の主は、見込みよりも遥かに順調な回復をみせ予定より一週間ほど早く退院が決まった北条さんだ。
 「やっぱり宮野さんね!制服姿とは雰囲気が違うから分からなかったわ!」
 「えっと...?」
 「北条さんはH&Uの会長なんだ。うちとも昔から繋がりがあって、院長の友人でもある」
 「か、会長さん⁈ そ、そうだったんですか...」
 確かに、年齢の割にはとてもしっかりとして若々しく気品のある方だなぁとは思っていたけれど...。まさか会長さんだったなんて...。
 「それにしても、どうして二人でここに?もしかして...二人はそういう仲だったの?まぁ!素敵なカップルじゃない!ね?香月院長?じゃあ、私はお邪魔みたいだから病室に戻るわね!」
 北条さんは少しニヤニヤとした笑顔で私達を交互に見て、そう言いながら軽い足取りで院長室を出て行かれた。

 扉が閉まり、急に部屋の中がシーンと静まり返る。途端に再び緊張が走り佇まいを正すと「二人とも座りなさい」との院長の言葉で、ソファに二人並んで腰掛けた。
 先程までご友人とお話をされていた為か、柊哉さんの面影を感じるキリッとした目元は鋭さがあるものの以前ここでお見かけした時よりも表情は柔らかい。
 「宮野優茉さんだったね?加賀美社長から事情は聞いたよ、我々の事に巻き込んでしまい申し訳なかった。身体の具合はどうだい?」
 「い、いえ、大丈夫です。身体の方も回復しておりますので...」予想していた展開とは全く違う言葉に慌ててそう答えたけれど「まだ回復はしていません。先週末も心労による発熱があったばかりです」といつもより格段に低い声で院長を睨む柊哉さん。
 「そうか...それは申し訳ない」と頭を下げる院長に、彼は本題を切り出す。
 「父さん、俺たちは今一緒に暮らしています。まだ彼女のご家族に挨拶は済んでいませんが、許可が得られ次第彼女と結婚しようと思っています」
 柊哉さんの言葉を聞いた院長は、黙ったまま少し俯き何かを考えているよう。次に発せられる言葉を待つ間、私の心臓は周りに聞こえていないかと心配になるほどドクンッドクンッと痛いくらいに強く打ち付けていた。