エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

柊哉side
 ナースステーションで風見くんと話をしていると、優茉が山岸さんのご家族を見送りに行く姿が見えた。俺が会釈をすると、笑顔で応える母親と手を振っている男の子...。少なくとも俺が退室するまで、母親は涙を流し彼は俯いたままじっとしていた。それがこの短時間であんな風に笑顔を見せている...そして反対の手に握られているのは...折り紙?
 同一人物とは思えない変化に一瞬面食らったが、なんとか手を振り返した。そして耳に入って来た天宮さんと優茉の会話...。あの親子は、彼女のおかげで笑顔になれたようだ。
 俺は医者になってから、どんなに勉強をして技術を磨きオペや処置をして病気を治す事は出来ても、患者さんの心の傷を治す事までは出来ないのだと思い知った。だからこそ、看護師やリハビリスタッフとも連携をとり、チームで身体だけでなく心までケアしていく事が大事だと思っている。気持ちに寄り添い前を向かせる事が出来る彼女の力はやはりすごい。このチームには欠くことの出来ない人だ。
 少ししか見えなかったが、あの親子が持っていたのはおそらく折り紙で作った四葉のクローバー。
 やっぱり、優茉だったんだ。彼女の優しさは、あの時から何も変わっていない。
 
 ...そうだ、俺はあの時病気だけでなく優茉を悲しみからも救ってあげたいと思ったんだ。
 でもどうしたら救う事が出来る...?食事や家事など俺の為に尽くしてくれる優茉に何をしてあげられるだろうか。彼女は決して物や見返りを求めるようなタイプではない。だとしたら、優茉が恋人に求めるものとは...?もうあまり時間がない中で、俺は何が出来るだろう...。