エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 そして週末を迎え、先生は仕事を終えた夕方車で迎えに来てくれた。
 荷物を乗せてもらい助手席に座ると、程よい柔らかさのレザーのシートはまるでソファのように座り心地が良いうえに、先生の運転は穏やかでとても快適だった。
 けれど、初めてのシチュエーションに緊張し、閉ざされた二人きりの空間でどこを見て良いのかもわからず気の利いた言葉一つも出てこない。
 ちらっと先生の方を見ると、夕陽をバックに眩しいほど綺麗な横顔が目に入って思わずドキッとしてしまい慌てて目を逸らした。
 赤信号で止まると「大丈夫?」と少し俯いていた私を覗き込むように視線を合わされる。
 「は、はい。あの...私、男の人の車に乗せてもらう事も初めてで、どうしたら良いのかわからなくて...」
 「...今さら聞くのも変だけど、こんな提案を承諾してくれたって事は今恋人はいないと思っていいんだよね?」
 「はい、しばらくそういう人はいません。...あの、先生は?」
 「もちろんいない、いたらこんな提案していないよ。俺もしばらくそういう人はいないし、親友達に言わせれば俺は昔から恋愛には疎かったらしい」と少し苦笑いしながら言う先生。
 勝手に経験豊富そうだと思っていたけれど、そんな事ないのかな?いや、でも先生がモテないはずがない...。
 「...あの、一つ聞いてもいいですか?」
 「何でも答えるよ」
 「先生は、どうしてお医者さんになられたんですか...?」
 「俺は...あの家に生まれたから、医者になる事だけを望まれていた。でもずっと、そこに俺の意思はなくて。本気で医者を目指すきっかけをくれたのは、ある一人の女の子なんだ。その子を助けたいと思った時、初めて自分の意思で医者になろうと思った」
 そう話す先生の横顔は少し寂しそうで、でもきっとその子を今でもとても大切に思っているんだろうなと伝わってきた。