守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

  怖くて声も出ず、それでもなんとか必死に冷静で冷たいその声に応えようとする。
 でもたった今、人間ではない存在に襲われ、そこを彼に助けられたのだと、ようやく理解をし始めた私の脳は、私の体をうまく動かしてはくれない。

「う……あ……」

 言葉にならない声しか出すことができない私に彼の顔が近づいて来る。
 視界でどんどん大きくなる彼の顔立ちは、この世のものとは思えないほどに美しい。
 青紫の瞳と長いまつげに気を取られていると、形のいい唇が動いた。

「ちょっと失礼する」
「──わっ!」

 か弱い少女のような声は出なかった。
 なんとなく恥ずかしくなって私は着物の袖で顔を覆いながら俯く。

 先程とは違い見晴らしのいい高さになる。
 ──ああ、彼に抱き上げられているんだ。
 なんだか落ち着かない浮遊感に包まれながら、私はあたふたとする。
 彼の逞しい腕に抱きあげられて、心臓が大きく鳴り響く。

 彼に聞こえないだろうか。
 そう思うほどに私の鼓動は速く大きく鳴っている。

 今、誰かにこの状態を見られたらどんな風に思われるだろうか。