守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 あらかじめ救護班をこちらに向かわせているため、そのことを話ができる程度の軽傷の隊員へ伝えた。
 私は石畳の敷かれた庭を駆け、妖魔の元へと向かった。


 裏庭にそいつはいた。
 妖術使いの妖魔は、圧倒的強さで隊員たちの攻撃を受け止め、薙ぎ払っている。


『香月を殺したのは、大太刀を持った人型の妖魔。白く長い髪で赤い目をしている。名は──』


「灯魔」

 私が名を呼んだことで、灯魔は私の方を見る。
 首を傾けてにやりと不気味に笑うと、白く長い髪をかきあげた。

「待っていたよ、凛ちゃん」
「なぜ、私を知っている」
「今まで送り込んだ妖魔は僕が作り出したから。情報を共有するのは普通だろ?」

 彼は頭に人差し指を当てながら、得意げに笑う。
 私は守護刀を抜いて戦闘態勢に入ると、今まで嬉しそうだった彼の表情が一気に壊れる。
 ピクリと頬と唇を動かすと、静かな怒りを私に向けてきた。

「そうか、君が次の継承者か」
「どういうこと?」
「なるほど、君がそんなに僕に憎むような表情を向けるわけも、なぜここに来たのかもわかった」

 彼は大太刀の切っ先を真っ直ぐに私に向ける。