守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~


「美味しい……」

 どんな時もお腹は空くもので、この温かさが身に染みる。
 白湯を一口飲むと、より体がほかほかになった。


「凛ちゃん、いるかい?」
「大家さん!」

 向かいに住む大家さんが来たようで、私は急いで手を洗って戸を開けた。

「元気だったかい、凛ちゃん」
「はい。大家さんもお元気そうでなによりです」

 大家さんは早くに奥様を亡くされて、一人で生活をしていた。
 元々私の家には息子さん夫婦がいらっしゃったが、都に移り住むことになった時にちょうど私が家を探していたため、破格の値で貸してくださっている。
 少し見ないうちにまた腰が曲がってしまったようで、大家さんがとても小さく見えた。

「田んぼの裏手にある梅がね、昨日から咲いているんだ。よかったら見に行っておいで」
「咲いたんだ、あの梅」
「ああ、五年ぶりに咲いたよ。今年は何かいい事があるんじゃないかね」
「はい、この町にとってもいい事がきっと起きますよ」

 そんな会話をしていると、大家さんがじっと私の事を見て微笑んだ。

「何かあったかい、凛ちゃん」
「──っ! ううん、なんでもないよ」