守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 長い夢を見た──

 昔の記憶。
 私が隠し里で一年育った後、屋敷で零様に再会した日の事。

『お名前はなんていうですか?』

 綺麗な赤い着物を着ていた綾芽様は私に尋ねられた。
 名前と年を言うと、綾芽様は嬉しそうにする。

『私は綾芽です。あなたのことは零様から聞いていました。年が近い女の子がいてくれて嬉しいです!』
 私の手を握ってなんとも激しくぶんぶん上下に動かす。
 勝手な想像で怖い女性をイメージしていたため、彼女の気さくな様子に驚いた。
 そんな彼女の後ろには零様の姿があり、彼は書物を読んでいてこちらに視線は向けていない。

『姫、そいつが戸惑っている』
『す、すみません……つい嬉しくなり……』

 しゅんとして俯いた彼女は、私に謝った。
 ああ、心が綺麗でなんて可愛らしい人なんだろう。
 それが私の綾芽様への第一印象だった。


 時が経って、私が妖魔専門護衛隊に入隊した後も、綾芽様は私にとても良くしてくださった。
 年が二歳しか変わらなかったのもそうだが、食べることが好きでよく三人でその話もした。

『凛っ! 今日の煮物みたいなの何?』