守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 暗い部屋で光る青紫色の瞳は、私をじっと見つめていた。
 その瞳に捕らわれるように、私は動けず息が止まる。

「男を誘惑するのにうまくなったな」
「ゆ、誘惑なんて……!」
「無自覚か」

 低くお腹に響く声は、私の鼓動をさらに速くした。
 だめだ、このままだと彼に飲み込まれてしまいそうになる。

 私は腕を振り払って急いで起き上がると、頭を下げた。

「申し訳ございませんでした!」

 そのまま慌てて部屋を後にしようとする。
 だが、そこでお礼を言っていないことに気づき、振り返ってお礼を言って自室へと急いだ。

 息を乱しながら早足で廊下を歩く。
 ようやく部屋についた瞬間、ふすまを一気に閉めた。

「はあ……はあ……」

 私はその場にへたり込んでしまう。

 なんだったの、あれ……。
 零様に掴まれた腕の感触がよみがえってきて、脳内が零様で溢れる。


『男を誘惑するのがうまくなったな』


 からかわれたのかもしれない。
 触れられたその手が熱くて、あの煽情的な瞳が頭から離れない。

 まだドクドクと鼓動は鳴りやまない──

 好きという気持ちが溢れて止まらない。