守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 馬に乗り慣れていない私がいくには非効率的すぎる。
 だからこそ、零様は私にこの屋敷の、綾芽様の警護を任せて自ら行こうとなさっている。

「かしこまりました。無事のご帰還、お祈りいたしております」
「ああ」

 短く返事をすると、零様はその足で門の方へと向かわれた。


 隠し里に向かわれた零様を見送った後、私は綾芽様のお部屋へと向かった。
 閉じられている部屋の前に膝をつき、手をついて挨拶をする。

「凛、本日綾芽様の警護を担当させていただきます。何かあればなんなりとお申しつ……」
「凛っ!!!!」
「──っ!!」

 ふすまが勢いよく開いたかと思えば、中から出てきたその人に私は抱きしめられた。
 ふわっと甘い花のような香りがするこの方は、桜華姫である綾芽様。

「待っていたわよ! さあ、中に入って」
「し、しかし……!」
「もう、そんなこと言わずに。昔も一緒に遊んだじゃない!」

 私は綾芽様に誘われて部屋に入る。
 ここは綾芽様の好みで小さめの部屋だが、洗練された家具の数々と骨董品が置かれており、甘いいい香りがいつもしていた。