守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 もしかしてすぐに戻られる予定?
 それならば、私がほんのひとときの警護につくことも納得がいく。
 そう考えた私は零様に尋ねた。

「零様はどちらへ?」
「御崎峠のほうから妖魔の気配がする」
「──っ!」

 御崎峠と言えば、隣国との境目である。
 しかし、実はそこには屋敷の者数名しか知らない隠し里がある。
 その隠し里は、守護王の直轄隠密部隊の拠点であり、隣国からの防衛の拠点、さらに言えば対妖魔の拠点の一つでもあった。
 六年前、零様に助けられた際に、一番最初に私が預けられた場所がそこだった。
 里のみんなはその日、たくさんのご馳走を食べさせてくれた上に、暖かい布団で眠らせてくれた。
 ──まあ、次の日から里長である朱里《しゅり》様によって、教養の叩き込みと体術の厳しい訓練が始まったのだけど……。

 そんな里から妖魔の気配がするってことは、きっと何かあったに違いない。

「零様、朱里様たちは……!?」
「それを見に行く。だが、あやつらのことだ、死んではおるまい」

 隠し里のある御崎峠まではかなりの距離があり、馬でも一刻近くかかる。