守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 伊織様を失ったことにより、一時的に隊長が不在となった妖魔専門護衛隊。
 どこか皆不安を抱えながらも、日々の任務や訓練に励むことになった。

 日中巡察の任務から戻った後、私はどこかそんな不安を振り切りたくて刀を体に慣れさせる。
 守護王の護身刀を手にして、何度も攻撃の型をおこなってみた。

「やっぱり、動きやすい……」

 懐刀よりも少しだけ刀身が長いが、幅が広い。
 だが、どうしてか体に馴染んで軽く感じる。

「はっ!」

 私は壁の傷に向かって守護刀を突き出すと、その切っ先は視界の中でぴたりと傷と重なる。


『その刀、お前に預ける。使いこなせ、それを』


 零様に言われた言葉が脳内に響き渡る。
 守護王の紋付きの漆黒に染まった鞘に、ゆっくりと刀身をしまっていく。
 預けられた大事なその刀を両の手の平に置き、じっと見つめた。

「使いこなす……」

 この守護刀を授かって一ヶ月が経とうとしている。
 授けられた翌日の任務で使わなかった事を零様に話すと、いつものように鋭い視線を向けられてしまった。