守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 私の名を呼ぶと共に零様から投げ渡されたそれは、守護王の護身刀だった。
 私はすかさずそれを抜くと、頭の上から降りて来る刃を受け止める。
 そうして、さっと身を引いて相手が自分の勢いでよろめいたところに、私は寸止めで相手の喉を狙う。

「諦めろ、伊織。お前はそいつには勝てない」
「こんな小娘に負けるわけが……」

 悪態をついたところで、伊織様は何かに気づいたように目を見開いた。

「ふふ、ふはははは! そうか、天城零、お前は俺ではなくこいつを選んだのか」

 理解ができずに私は零様を見ると、彼は静かに伊織様を見つめていた。
 そうして刀を捨てた伊織様は、手をあげて降参の意を示す。

「連れていけ」

 零様の指示を受けて、廊下に控えていた護衛兵たちが、伊織様の身柄を拘束する。
 伊織様は最後に立ち止まって笑いながら私に告げた。

「お前はいずれ捨て駒にされる。あいつに」

 そうして零様を一瞥した彼は、護衛兵に連れていかれた。

 立ち尽くす私の元に、零様が近づいてくる。
 俯く私の頭に彼の大きな手が触れた。

「よくやった」
「──っ!!」