守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 怒りに身を任せた彼の攻撃は一気に単調になり、隠し持っていた武器を今度は私の顔目がけて突いて来る。


 ──次の瞬間に勝負は決まった。
 突き攻撃をかわした私が、彼の下から喉元に切っ先を向ける。

「お願いです、罪を償ってください。伊織様」

 悔しそうな舌打ちと、鋭い視線に負けそうになる。
 しかし、そんな見つめ合いの静けさを破ったのは、あの人だった。

「終わりだ、伊織」
「──なっ! ……天城、零」

 零様と伊織様の視線が交錯する。

「お前が俺を恨むことは否定しない。だが、お前は踏み越えてはいけない一線を超えた」
「ふざけるなっ! 部下に死ねと命じるようなお前に言われたくはない! 香月にお前は死ねと命じた!」
「ああ」

 動揺することなく肯定する零様の様子を見て、大きく顔を歪めた。
 伊織様は、零様が憎らしくてたまらないというような視線を向ける。

 二人の凄まじい圧に一瞬ひるんだ私は、伊織様に反撃を許す。

「──っ!」

 弾き飛ばされた私の懐刀は、地面を滑っていく。
 伊織様はその隙に私を仕留めようと、刀を振りかざす。

「凛っ!」
「──っ!」