守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 もしや刀で魚を捌いてこいとかそういう……。

「違う」
「まだ何も言ってません」
「どうせお前のことだから、魚を捌く想像をしたはずだ」

 ば…ばれてる……!
 私は必死に頭を振ってごまかしたが、零様は信じていないようだ。

 次の曲の始まりを告げる甲高い笛の音ではっとする。
 
 そうだ、台所に向かう……!
 零様から受けた指示を思い出して彼の目をみるが、その瞳はもう舞に移されていた。
 「行け」という指示だと捉え、私は後ろに下がろうと振り返る。
 すると、後ろから声をかけられた。

「『さばく』ものを間違えるなよ?」
「……? はい」

 その声はいつもより低く、それでいて重く感じた──



 台所は確か廊下の突き当りを左に行った先にあったはず……。
 どうして零様は私に台所に行けなんて言ったのだろうか。
 魚を捌く?
 猪肉の解体だろうか?
 いや、もしかして、何かこっそり欲しいものがあったとか……!

 そう感じて先程の光景を思い出す。
 あれ……?

「あまりお善に手をつけていなかった……」