守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

「申し訳ございませんっ! それから、お、おはようございます!」

 しばらく頭を下げていると、鼻で笑われる。

「お前は相変わらず生真面目だな」
「いえ、そんなことは……」

 安っぽい否定の言葉しか思い浮かばなくて、俯く。
 そうしていると、ふと地面の影が動いた。
 零様の足が近づいて来ると、声をかけられた。

「槍はやめろ」
「え……?」
「お前は伊織にはなれない。あいつを見るのはやめろ」

 ──どうしてそんなことを言うのだろうか。
 零様を見上げると、彼は真っすぐに私を見ていた。

「──っ! なぜでしょうか……?」

 その問いには答えず、もう一度彼は私に冷たい声を放つ。

「伊織には注意しろ」
「え……?」

 何一つ言われたことを理解できずに、私は戸惑うばかり。
 動揺をしていた私を一瞥すると、背を向けて戻られていく。

 彼が廊下の角を曲がって姿が見えなくなるまで、じっとその姿を追ってしまっていた。

『伊織にはなれない』

 伊織様は、妖魔専門護衛隊に入りたいと言った私を快く受け入れて、闘い方を一から教えてくださった人。