守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

 狙った先にある傷に向かって突いていると、その傷を作ってしまった時のことが頭をよぎる。

 こうして槍の練習をしていたある日のこと──
 汗で手が滑り、誤って手元から槍が飛んで行ってしまったことがあった。
 その槍は真っすぐ塀に向かい、なんと一点の傷を作ってしまったのだ。
 傷を見た伊織様にはもちろん、事の顛末を聞いた零様にも叱られてしまい、私は一週間稽古禁止の処分を受けた。
 ひたすら一週間木刀すら持たせてもらえず、書物整理をするはめに……。

「はあ……はあ……」

 そんな事を思い出しながら、額の汗をぬぐってもう一度槍を構え直す。
 最初は真っすぐにすら突けなかった槍も、段々体になじんできたようで、おおよそ狙ったところを突けるようになった。

「あっ!」

 そんなことを考えていると、足元にあった小石でバランスを崩してしまう。

 天を仰ぎながら後ろへ倒れていく最中で、私の体は誰かの腕によって支えられる。
 私は振り返った。

「零様……!」
「お前はやはり危なっかしい」

 私はすぐさま体を起こして勢いよく頭を下げた。