守護王の最愛~運命を壊す禁断の恋は、祝福の淡雪を降らせる~

「──ぃ……おいっ! おい、凛!」
「は、はいっ!」

 声をかけられて私はびくりと肩を揺らした。
 つい考え事に夢中になってしまうこの癖をどうにかしたいが、もう昔からだ。
 のどかでよく晴れたこの日、この国で一番華やかな日が訪れる。
 ──「春の麗香式」
 「春の国」と呼ばれたこの国は、一年中暖かな気候で過ごしやすい。
 噂によると、一年の中で気候が変わる国があるというらしいが、私はこの国を一度も出たことがないためわからない。

「ほら、ぼーっとするな。零様がいらっしゃるぞ」

 私は襟を正して背筋を伸ばすと、少し離れた屋敷の中から背が高い男性が姿を現す。
 縁側に立つ彼は、儀式用の装束に身を包み、青紫色の瞳が輝いている。
 庭で彼を出迎えた都の貴族様たちは、頭を下げた。

 すると、零様は私のほうを見て目を細めた。

「え……」

 そこで初めて私は、護衛兵たちの中で自分一人が立っていることに気づく。

「おいっ! 凛っ! 何してる!」

 そう言った私の教育係である上司は、私の頭を押さえつけて無理矢理に跪かせた。