はるけき きみに  ー 彼方より -

 クレイブは困ったように手を引っ込めた。そして、
「これはこれは、無事に帰って来てくれてうれしいよ」
 英語で話しかけてきた。

 その大げさな身振り手振りが目についた。
 これが西洋人の仕草だ。
 え? とマシューはその感覚に驚いた。

 ほんの数日、日本人の中にいた。
 その間に感化されたのだろうか。
 自分も西洋人であるのに、と。

「紅茶はいかがかな。とっておきの茶葉があるんだ」
 クレイブは気を引くように歓迎しようとする。

「いや、紅茶など結構です。それよりも肝心な話を進めましょう」

「肝心な話・・とは、いったいどんな話かな」

「まずはあの嵐の夜のことだ」
 単刀直入に切り出した。
「承知のように我々は海に投げ出されたのだ。こうして生きているのは奇跡に近い、九死に一生を得て生還しているんだ。それについてどう思われるのか」

 船長の目が泳ぐ。
「いや、あのときはほかに打つ手がなくて」

「打つ手がない?」
 サジットも、
「あのときは航海に長けた水夫が大勢いたよね。それなのに素人の我われになぜ危険なマストに登れと言ったのだ」

「いや、その・・」
「絡んだロープの操作は熟練した水夫がやるべきだったんだ。そうだろう?」