はるけき きみに  ー 彼方より -

 翌日、近江屋から使いが来た。

 例のオランダ船の船長が会いたがっているのだと。
 マシューらと話すのを切望しているのだと。

「その船に乗り込むのでしょう。大丈夫かしら、危険なことはない?」
 紫音が心配げに聞く。

「安心して待っていてくれ。船長は俺らがいなくなったら困り果てるんだ。悪いようにはしないさ」
「・・・・」

 口笛を吹く気軽さで八重の家を後にした。


 近江屋は港で待っていた。
 海上に、見慣れたフライロート号が停泊している。

 乗船すると見知りの水夫に次々と出会う。
 マシューらを見る目は驚いていた。
 その顔の半分はどこか決まり悪げに歪んでいる。

 通されたのは船の貴賓室だった。
 長い航海でもマシューとサジットは入ったことのない部屋だ。

 そこの大きなソファーにヨーハン・クレイブがいた。

 マシューらを見ると立ち上がった。
 満面の笑みで手を差し伸べる。握手をしようというのだ。
 しかし二人は応じない。